このパブリックアート・プロジェクトは上大岡駅前再開発計画の一環として、地域に潤いと特色を与えるために構想されました。
再開発計画によってできたビル「ゆめおおおか」は京浜急行線と鎌倉街道にそってのびる約300メートルの長さの複合的な建物です。
そしてこの「ゆめおおおか」ビルの内外19ヵ所に18人のアーティストが作ったアート作品19点が設置されました。
このゆめおおおか・アートプロジェクトは、そのユニークな作品とスケールの大きさによって、国内外の多くの人々を魅了し、長く地元の住民に愛されるでしょう。

アート一覧
①不確定性正方形ー正方形のある交番

横浜港南ロータリークラブ寄贈
倉重 光則(くらしげ みつのり) 日本 1946年福岡県生まれ
設置場所:交番
日本で初めてのアーティストが作った交番です。パネルに使われた4色はそれぞれ水色―純粋な心、肌色―健康な肉体、黒―強靭な精神、黄色―暖かい感情を表し、人間のあるべき姿を象徴的に示し、我々に社会における交番の役割を思い出させてくれます。
②Good Luck(グッド・ラック)

吉水 浩(よしみず ひろし) 日本 1965年東京都生まれ
設置場所:歩道
「グッド」という幸運を示す親指を立てたサインを抽象的に表したもので、道行く人の幸運を願う作品となっています。明るいブルーは希望、ちりばめられた星は幸福の象徴です。それが湧き立つような感情を表す黄色と一対になり、ポップな親しみやすい表情を創り出しています。
③フォレスト

横浜港南ライオンズクラブ寄贈
シムリン・ギル マレーシア 1959年シンガポール生まれ
設置場所:バスターミナル
この作品は熱帯の植物に文字が記された様子を写真にしたもので、自然と都市文明が交流する姿の象徴になっています。自然と文明は人類の歴史のなかで深く関わってきましたが、それは上大岡においても同様でした。この場所もかつては緑におおわれていたのかもしれません。
④STAR LIGHTS(スター・ライツ)

方 振寧(ふぁん つぇにん) 中国 1955年中国生まれ
設置場所:エレベーター・シャフト
エレベーター塔を作品にしたものです。昼はガラスのミニマルなオブジェですが、夜は黄色い希望の星が光る、輝くモニュメントになります。いにしえの時代に塔は敵を見張るために立てられました。しかし平和な今日、この作品は道行く人の道標となり、照明灯の役割を果たします。
⑤子ども達は時を駆け抜ける

木津 文哉(きづ ふみや) 日本 1958年静岡県生まれ
設置場所:横浜銀行 上大岡支店ロビー
キャンバスに描いた絵画と、壁のブルーの帯に展開したレリーフからなる作品です。絵画の中の子供たちは、キャンバスから飛び出て、ロビーの上を元気よく走り回っています。自由に空間を駆け回る子ども達は、白いシルエットで描かれていることで、空間だけではなく時間をも駆け抜けていることを象徴しています。
⑥花 過ぎるものとそうでないものと

須田 悦弘(すだ よしひろ) 日本 1969年山梨県生まれ
設置場所:三菱UFJ信託銀行 上大岡支店ロビー
エレベーターホールの上部空間を作品に仕立てました。壁は赤と白に塗り分けられ、花の彫刻が効果的に配されています。これらの木彫の花は壁に向かって咲いていますが、この現実にはあり得ないような不思議な光景が、ロマンティックで不可解な雰囲気をつくりだしています。それは失われた記憶を象徴し、私たちに過ぎ去った時間を思い起こさせます。
⑦仮想の庭園(가상의정원)

崔 正化(ちぇ じょんほぁ) 韓国 1961年韓国生まれ
設置場所:オフィスタワー メインエントランス
オフィスビルのロビーを現代の日本庭園に見立てた作品です。弧を描いて建つミラーグラスのスクリーンは、行き交う人に錯覚を起こさせるような視覚的効果をつくりだしています。また富士山から運んできた石を石庭に模したたたずまいは、日本の自然と精神の象徴です。あわただしいオフィスビルの中に、日本の伝統を現代的に再現しています。
⑧JIZO 001(上大岡)

小沢 剛(おざわ つよし) 日本 1965年東京都生まれ
設置場所:中央棟2階 エントランス
作者はこの巨大なビルの片隅にジゾウを仕掛けて、建築の小さな隙間に私たちの目を誘ってくれます。予想外のところに設置されたこのジゾウを目にすることで、周囲の空間が謎めいたものに見えてくるでしょう。それは私たちの意識に異化作用を引き起こす触媒のようなものです。作者はこのジゾウを世界各地に設置して写真に撮り、一連の作品にする予定です。
⑨『わたし』の歴史 あなたのなかにある

ナウィン・ラワンチャイクン タイ 1971年タイ生まれ
設置場所:ガーデンコート
この本の形をしたオブジェは時間を封印した作品です。左右のページには、上大岡周辺の現存しない古い地名と、現在の地名が記されています。背表紙には昭和36年当時の上大岡駅の写真が使われ、この周辺の歴史そのものが作品となっています。そして近隣の子ども達300人の未来へ向けたメッセージが入れられている一種のタイムカプセルでもあり、作家と周辺住民とのコラボレーション作品になっています。
⑩World is Yours(ワールド イズ ユアーズ)

奈良 美智(なら よしとも) 日本 1959年青森県生まれ
設置場所:センターコート
この特徴ある吹き抜け空間を子供の遊び場に見立てました。梁から下がったブランコにのった、ルーシーと名付けたちょっと意地悪そうな目をした女の子は、強く生きる人間の姿を表しています。またその横には、希望を表す星を釣っている男の子がいます。これは自分の子供時代を想起させると同時に、子供の多彩な表情をあらわした作品です。
⑪パッシング・モーメンツ

平川 典俊(ひらかわ のりとし) 日本 1960年福岡県生まれ
設置場所:センターコート 外の柱
センターコートを囲む10本の柱に文章を配置し、この円柱型のアトリウム全体を作品に転化したものです。これらの詩句は非日常性を求めて旅する人=アーティストが人々に対して、日常気づかない人間の真実を我々に垣間見せてくれる詩句といえます。
⑫あなたはどこへいくのか? あなたはどこからきたのか?

長澤 伸穂(ながさわ のぶほ) 日本 1959年東京都生まれ
設置場所:うねうね壁外階段
2階から6階まで続く外階段全体を作品としています。階段の蹴上げ面に彫刻された文字は、普遍的な命題といえる5種の文章を8カ国語で表記したものです。階段を昇るにしたがい文章が現れ、我々の生きる意味や未来についても考えさせるような作品になっています。
⑬ルーフトップ・パッセージ(8点組)

PHスタジオ 日本 1984年活動開始
設置場所:中央棟4階 屋上広場
様々なストリート・ファニチャーや遊具的なオブジェ8点を屋上広場に展開した作品です。社(やしろ)を象徴的に再現した「鎮守の森」や、この地にあった飲食店のイスを再生して組み合わせたベンチは、上大岡の過去を取り込んだものです。上大岡の記憶を刻みながら、そこに新たな息吹を与えた作品となっています。
⑭Traveler(トラベラー)

高柳 恵里(たかやなぎ えり) 日本 1962年神奈川県生まれ
設置場所:京急百貨店4階 屋上広場壁面
森のシルエットを持つオブジェですが、旅人が荷をかついで進む姿も織り込まれています。森は人々に実りや思索の時を与える場所であり、同時に何かを探して前進する旅人に一刻の安らぎを感じさせる空間ともいえるでしょう。屋上の人工的な空間に現れた大きな森と木陰の陰喩です。
⑮DOB君、こんにちわ

村上 隆(むらかみ たかし) 日本 1962年東京都生まれ
設置場所:中央棟4階 エレベーターロビー
ここに描かれたDOB(ドッブ)君は作者が創作した物語の主人公です。このDOB君は何かのキャラクターを連想させ、ある種の親しみやすさとなつかしさを感じさせます。ここで作者は、愛嬌のあるDOB君の大きな顔を、港南区の花ひまわりを連想させる鮮やかな黄色のベースに明快な表現で描き、屋上を訪れる人に陽気なメッセージを贈っています。
⑯ジグソーパズル(ヨコハマ)

横浜港南ライオンズクラブ協賛
福田 美蘭(ふくだ みらん) 日本 1963年東京都生まれ
設置場所:港南区民文化センター 4階ロビー
この作品は横浜のイメージを組み合わせたジグソーパズルになっています。これらのイメージは、ベイブリッジや港南区の花ひまわりなど、横浜の風景をモチーフとした絵はがきをコラージュしたものです。作者は、旅と絵はがきの関係とジグソーパズルのゲーム感覚を結びつけた、都会的でスピード感のある作品に横浜の「今」を閉じこめました。
⑰音のカタチは光のカタチ…

作品名:
「音のカタチは光のカタチ
人々に気付く間もなく
静かにその光はやってくる
やがてそれは天の一つ所に集まりて
瞬く間にここより拡がる
ユメ多く
ユメ大き
ユメオオオカ
上大岡 この地より
発せられし光 風となり」
平林 薫(ひらばやし かおる) 日本 1955年神奈川県生まれ
設置場所:港南区民文化センター 6階ホワイエ
音楽ホールのホワイエという場所にあわせて、作者は音楽をテーマに壁画を製作しました。楽器を描いた陶板は、大きな陶板の上に重ねられ、レリーフのような立体的な構成になっています。光かがやく音、競演する楽器をモチーフに、作者の音楽への想いとこの生まれ変わった上大岡への希望を表した叙情詩といえる作品です。
⑱Bloom(ブルーム)

吉水 浩(よしみず ひろし) 日本 1965年東京都生まれ
設置場所:換気塔
巨大な換気塔を覆うように設置された作品です。大きさ、容積ともに国内で最大級のオブジェとなります。光沢のある明るいブルーが、打ち寄せる波と行き交う雲を連想させ、巨大なボリュームをおおうダイナミックな曲線と積層した平面が躍動感を表しています。
⑲谺(こだま)の原ッぱ

朝日がさっとのぼり、空を喜びで輝かす。
「無心の歌、有心の歌: ブレイク詩集」(角川文庫)
あちこちで鐘がたのしく鳴り、春が来たのを迎える。
ひばりにつぐみ、繁みに巣のある小鳥たち、
晴れやかな鐘の音に合わせて、あちこちに名乗りをあげるとき、
僕たちの遊びが見られる、この谺の原ッぱでは。
『無心の歌』より【こだまする草野原】―ウィリアム・ブレイク 作(寿岳文章 訳)
岡崎 乾二郎(おかざき けんじろう) 日本 1955年東京都生まれ
設置場所:港南区民文化センター 屋上
音楽ホールの音に共鳴して波打ち、まさに飛び去ろうとする空飛ぶ絨毯と、その影からなる作品です。絨毯はパイプのうねりで表され、影に相当する部分には人工土が敷かれています。人工土には風で運ばれてきた雑草の種が落ちて芽を吹きいつか緑に変わり、時間と自然を象徴しています。都市の中でも、自然は力強く蘇るというメッセージを込めた作品です。